Lesson 2. FUEにおけるグラフト切断率と毛包切断率の違い
【Point!】
- FUEでは、グラフト切断率と毛包切断率の違いを理解しましょう。
- 現実的には、相当な小株数移植でない限り、損失グラフト(後のレッスンで予定)を正確に評価できません。したがって、個々の患者さんのグラフト切断率も毛包切断率も正確には算出できていない場合が多いことを認識しましょう。
- 最も信頼できる切断率の評価は、客観的評価(後々に検討できる採取グラフトの写真撮影)での毛包切断率の算出です。
- この機会に、グラフト切断率:TTRと毛包切断率:FTRについても、このレッスンで理解しておきましょう。
【Point!】
自毛植毛術におけるFUEで採取されたグラフトは、以下のように、3分類されます(図と写真を参考)。
1. Intact graft(採取された毛包のすべてが切断されていないグラフト)
2. Completely transected graft(グラフト内の毛包すべてが切断されているグラフト)
3. Partially transected graft(グラフト内に切断されていない毛包が1つ以上あるグラフト)
実際に1番目のIntact graftのすべては、当たり前のことですが、移植グラフトとしてすべて使用します。一方、2番目のCompletely transected graftはどうでしょうか?グラフト内の毛包(1つの毛の組織)がすべて切断されているため、発毛しないか、うぶ毛となってしまい、太い毛髪は全く発毛しない可能性が極めて高いグラフトということになります。したがって、このようなグラフトを移植してしまうと、実際には毛が生えていないように見えるため、状況によっては移植されないグラフトになります(➡ 前回のProの植毛術・Lesson 1を参考にしてください)。3番目のPartially transected graftは、1つ以上の完全な毛包があるグラフトなので、移植されます。しかし、例えば2本毛グラフトが移植されたとしても2本とも太い毛髪が発毛するとは限りません。
次に、FUEにおける切断率について、考えてみましょう。切断率は以下のように2分類できます。
1. グラフト切断率:TTR (%): Total Transection Rate=Completely transected graft rate(完全に切断されたグラフト[=上記2のグラフト]の割合)
2. 毛包切断率:FTR (%): Follicle Transection Rate(すべての毛包のうち切断されている毛包の割合)
では、この2種類の切断率を比べてみましょう!
図のように5つの2本毛グラフトが採取されたとしましょう。2つがIntact graft、1つがCompletely transected graft、2つがPartially transected graftだとします。グラフト切断率を計算してみましょう。5つのグラフトうち1つだけのグラフトが綺麗な毛包を1つも持っていないので、5分の1で20%となります。一方、毛包切断率は、10個の毛包のうち4個の毛包が切断されているので、10分の4で40%となります。
このように切断率は、算出の違いによって全く違った結果となってしまうのです(今回の場合は2倍も違う)。
FUEにおける切断率に関する分類では、本当は毛包切断率:FTRがわかればグラフト切断率:TTRは必要はありません。なぜTTRという分類があるかというと、FUEの初期の時代においては毛包切断率が今と比べると圧倒的に多く、移植する際において太い毛髪が全く生えないグラフトの割合を算出しておく必要があったからかもしれません。この点についての詳細は、次回のレッスンで引き続き説明します。
(2022年3月、5月更新 K. Yamamoto記)