Lesson 3. 20歳代の若年男性に対するM字部植毛術
20歳代、男性。必ずしも植毛術を急ぐ必要はないが、若年者ならではの美容的こだわり。
将来のAGA脱毛の進行を十分にご理解している場合、将来的にも安全な植毛術が実施できます。
【術前】
HN分類(➡ 男性のAGAのHN分類表をご参考ください。):2型。額は狭く、M字部の薄毛もそれほど薄くありません。正常範囲内の状態ですので、通常は植毛術を急ぐ必要は全くありません。
フィナステリドは2年間服用していましたが、改善することもなく、ご来院されました。
"M字部が気になって、自分の好きな髪形に自由にできなくなった。”
というのが植毛術をやろうと思ったきっかけでした。
重度AGAの遺伝歴がないことと、薬剤などに対するAGA脱毛進行予防に対するご理解も良いことから手術を行う流れになりました。
生え際のラインは若干左測が高く見えますが、この生来のラインを保ったままM字部の植毛術(密度アップが主)を行うこととなりました。
遺伝的素因と年齢:重度AGAの血縁者はおらず、今後、AGA脱毛の兆候があれば、早期に薬剤服用を開始することによって対処可能と考えられる例です。
ドナーの状態:毛穴密度は平均75~80/㎠程度であり、ドナーの状態は良好でした。
術式の選択:HN分類では軽度AGAであり、将来のAGA脱毛の進行リスクが比較的低く、ドナー密度も良好です。したがって、問題なくFUEが選択できます。
【手術評価】
薄毛領域である移植部の面積は、10 ㎠強であり、平均移植密度は40グラフト/㎠で移植するとすると、400グラフト強の植毛術という見積もりになります。
しかし、手術料金は400グラフトも500グラフトも同等でしたので、500グラフトを選択されましたので、余分なグラフトは周囲(側頭部と後方のM字部の密度アップに使用)に移植することとしました(将来的なことを考慮し、生え際ラインは安易に下げません)。
(「移植グラフト数の見積り」について➡ 男性のAGAのHN分類表をご参考ください。)。
FUEの評価:FUEで最も評価すべき検査は毛包切断率です。この例では、毛包切断率(➡ Step3『Proの植毛術』をご参考ください。)は6%でした。また、グラフト損失率は9%であり許容範囲内でした。次回、植毛術を検討する場合でも、これらの数値を考慮に入れてFUEを選択しても問題ありません。
【手術結果 - 術後1年目】
術後評価は術後1年目で判断します。想定通りの結果となっています。
私的にはかなり濃い生え際ではないかと思いますが、ご本人は思い通りの状態になった、とのことでした。
生え際ライン自体を極端に下げたものでもないので、自然さを保っています。
この例の場合、急速なAGA脱毛の進行や重度AGAになったりするリスクは少ないと考えられます。以前はフィナステリドを服用されていましたが、AGA脱毛の兆候が現れるまで、薬剤フリーで様子を見るようです。
(2022年7月 K. Yamamoto記)