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Step 3 : 【実践編】もしもFUEで30%の『損失=毛包切断』があったら!

Lesson 6. FUEで実際に移植毛の損失が30%であった場合について解説

    【Point!】

    今回はわかりやすいように、移植されるグラフト内の毛包切断が15%で、移植できないグラフトの毛包切断が15%であったと仮定(合計で30%の毛包切断)して解説していきます。
  • 移植部:仮説では毛包切断は15%ですので、移植結果は毛包切断0%の場合と比較して15%減の結果です。
    しかし、グラフト自体のダメージは毛包切断だけではないので、毛包切断が多い人ほどグラフトの状態は全体的に悪くなり、発毛率はさらに低下すると考えられます。
  • ドナー部:本当に重要なのはドナー部です。ドナー部が無尽蔵あれば、移植はいくらでもできるからです。
    しかし、採取の悪い人は、くり抜く穴ぼこを余分に沢山空けることになるのです。通常、毛包切断が多い人ほど、ドナー部が焼け野原になるのが早いのです(これが”ドナー枯渇”の問題です)。

FUEでの毛包切断による運命

実際に植毛術を行う場合、「毛包切断が30%だから、30%減でしょう。」という単純なものではありません。
現実的には、前回(➡ Proの植毛術・Lesson 5を参考にしてください)のような数学的な計算のようにはいかないものなのです。
つまり、人間も自然の中の産物なので、計算だけでは済まされない”揺らぎ”が存在するからです。これは、手術を受ける患者さん自身だけの問題でもなく、私も含めた関わるスタッフ一同の要因によっても影響されるものです。この点まで、考慮してしまうと話が複雑になってしまいますので、今回は大きくは踏み込まないようにして、後々のLessonで少しずつ解説していくことにします。

まずは、理解しやすいように、実際のFUEを行って30%の毛包切断があり、他の要因は考えないものとします。
まず、基本的なところから復習するために、1つ目の図を見てください。

★ 当然のことですが、切断毛のないグラフト(Intact Graft)を移植した場合は、ほぼ100%の確率で後頭部と同じような太い毛髪が発毛すると期待できます。
★ 移植できるグラフトといっても、切断毛が含まれているグラフト(Partially Transected Graft)の場合は、切断されていない毛髪だけが太くなり、切断された毛髪はうぶ毛か発毛しません。したがって、2本移植したとしても実際には1本しか発毛していないように見えます。
★ グラフトの中の毛髪がすべて切断されているグラフト(Completely Transected Graft)を移植した場合は、切断毛は当然ながらうぶ毛か発毛しないため、特別な場合を除いて、移植せずに捨ててしまうでしょう。なぜなら、太い毛髪が生えないとわかっていて移植しても、まばらにしか生えずにスカスカになってしまっては患者さんからのクレームが増えるだけでしょう。当たり前のことですが、基本的に、患者さんは結果重視なので、それなりに結果は出さないといけないのです(私からすると、余分にドナーを痛めるということの方が、よっぽど嫌なのですが…)。また、切断毛自体は、移植すると発毛しないばかりか、炎症を引き起こしてしまうことも意外と多く、術後経過に害を及ぼす可能性があるので、積極的に移植する意味が少ないのです。


毛包切断によるドナーの影響

次に、30%の毛包切断があった場合にどれくらいドナーにダメージがあるのかを考えてみましょう。
わかりやすいように、1000個のグラフトを採取したい場合のシュミレーションです。2つ目の図を見ながら考えてみてください。
30%の毛包切断があり、その半分がCompletely Transected Graftとすると、15%余分に採取することになります。

  • 図A : 損失グラフトが全くなかったため、1000個の点状キズで終了しています。Goodですね。
  • 図B : 15%の損失グラフトがあるので、緑の数の点状のキズが増加しています。数学的には1000グラフトを採取するために、176個の穴を余分に空けて、176個のグラフトを捨てたことになります。
  • 図C : 実践的にはドナーのキズは図Bの数では済みません。採取の難しい人ほど、グラフト自体は引き抜けなくても皮膚だけ引きはがされるCappingという状態が増えてしまうのです。つまり、さらに余分な点状キズが増えてしまうのです。
    この例のように毛包切断が30%にもなるケースでは、余分なキズ自体も10%くらいは増加してしまいますので、さらに青ドット分のキズが増加してしまいます。
    また、専門的なことですが、無暗にキズを入れる場合、hidden transection(見えない部分の毛包の切断)も増えるということも考慮すべきでしょう。
    hidden transectionについても、後々に機会があれば、説明したいと思います。

この例では、1000グラフトを採取した例を示しています。
もし、このような状態で5000グラフトを採取する場合、どんなドナーになるか想像してみてください。
採取される5000個の点状のキズではおさまらず、緑と青のキズも今回示した場合のさらに5倍も増えるのです。
つまり、今回のペースで5000グラフトを採取した場合は、1000グラフト程度は捨てたことになり、1回分の手術がパーになるのです。
普通に考えたら、あまり良いとは思えませんね。その上にドナー部は広範囲に荒らされるのです。
したがって、FUEでは、損失グラフトを含めた切断毛包をしっかり評価する必要があるのです。

(2023年6月 K. Yamamoto記)

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