Lesson 9. FUEパンチの切離部分の形状(1)
現在のFUEでは、一般的な形状のパンチを使って、グラフトを採取しません。
今回は、外側射角パンチと内側射角パンチについて考察しましょう!
前回は、FUEの初期型パンチである外側斜角(Outside Bevel)パンチについて見てみました。
鋭利な外側斜角パンチを用いた場合、毛包切断率(FTR)が30%以下となる日本人のFUE適用者は4分の1程度であることがわかりました。結果的には、非常に厳しい結果ですね…。
当時の論文では、切断された毛包からも発毛するという報告が多く、また、切断毛からDuplicate(1本から2本が複製)されるというような怪しい報告もあったので、世界的には、その手法の簡便さからFUEのシェアは増え続けていったのです。
しかし、私の場合は、切断毛の移植結果に対しては当時から疑念が多く、長期間の間、かなり厳しく症例を選択していました。
そうは言っても、少しずつではあるが、世界ではFUEが発展・進歩していきました。残念なことに、FUE機器やパンチの発展は、日本ではなく、海外の賢明な医師達による努力が大きいのですが…。
私も初期の段階では、機器の開発などを試みようとしましたが、規制が厳しいことやコストの問題で断念しています。
今回の話に戻りましょう。
外側斜角のFUEパンチでは、構造上、FU(毛穴単位)をくり抜いていく時に大きな欠点があったので、内側斜角(Inside Bevel)のFUEパンチが登場してきました。
内側斜角パンチの利点については、Cole医師の論文が非常に参考になります(Facial Plast Surg Clin N Am 2013)。特に、鋭利なFUEパンチ(Sharp punch)に関しては、Cole医師の貢献が大きいのがわかりますので、是非とも拝読してもらいたい内容です。
では、図を見てみましょう。
図の左側の鋭利な外側斜角パンチを用いてグラフトを採取している状況を見ると、深部に向かうほど開いていく毛包(毛根)が切断されやすいことがわかるでしょう。
一方、図の右側の鋭利な内側斜角パンチを用いた場合は、切離部の内側が斜めになっているので、毛包(毛根)はパンチの内側に滑るように入り込むようになるため、切断が少なくなることが想像しやすいかと思います。
したがって、現在では、FUEでグラフトを採取する場合、鋭利な外側斜角パンチは使用しないのが大原則になります。
(2024年2月 K. Yamamoto記)