Lesson 7. 20歳代の若年者が植毛術を行う場合、最もしてほしくないデザインとは?

20歳代は生え際が低く、毛量が多いのが普通であると思っている年齢です。
しかし、生え際を極端に下げてしまうと、万が一、AGA脱毛が進行して生え際がどんどん後方に後退していった場合、生え際に移植された頭髪は不自然な状態として島状に取り残されてしまいます。
したがって、若年者で最も行ってはいけない植毛術におけるデザインは、『生え際を下げないこと』です。
若いからこそ、将来像を十分にイメージして治療戦略を立てておくことが重要です。

男性の場合、思春期が終わると、女性と違って額にある細いうぶ毛様の頭髪は男性ホルモンの影響を受けて目では見えない完全なうぶ毛に徐々に変化していきます。20歳代前半になると、このような変化で生え際が上がっていくことを自覚する男性は増えてきます。
さらに、困ったことに、AGA脱毛(男性型脱毛症)の素因のある男性は、このような成人男性になることによって起こるうぶ毛様の細い頭髪の退行だけではなく、うぶ毛様の頭髪の後方にあった太い頭髪(終末毛)も徐々に細くなり、そのうち色素を持たない目に見えないうぶ毛に変化してしまいます。
このような現象はM字部から起こることが大半で、これを自覚する方は、”どこまでハゲるのか?”と気持ち的に戦々恐々となってしまいます。

特に、20歳代前半の年齢では、思春期の頃の生え際を理想としてしてしまうので、A図の左のようでありたいと希望する訳です。ただし、このような理想は20歳代の若年者に限らず、一部の年配者も”昔のように”という理想を抱く方は結構いるわけです。基本形としては、A図右のような標準的な成人男性像を念頭においておくのが無難です。

もしAGAの素因がある場合で、将来B図上段(これは重度AGA脱毛の6型:AGA治療のタイミングとは?をご参考ください。)のように高度AGA脱毛者の素因を持つ一員であったとしたら、注意が必要です。いざ植毛術を行う場合、本当に冷静に生え際のデザインを検討しておかなければなりません。そして、植毛術を行うとしても、脱毛の進行を阻止するためにAGA治療薬を必ず継続使用する必要があるとお考えください。
そして、将来の状態を考慮せずに低い生え際になるようにという思いで植毛をしてしまうと、大切な移植毛(通常、後頭部や側頭部から採取される頭髪)を大量に消費するばかりでなく、実際に再度植毛術を検討する場合、後頭部の広範囲の瘢痕(キズ)部(特にFUE)が問題となってきます。これは、植毛術を行う立場から言えば、ハゲが進むと、有効な移植毛が足りなくなって、大問題なわけです。

では、実際に標準的な生え際であったにもかかわらず、生え際を思春期の頃のように移植してみたらどうなるでしょうか?
B図下段の左が標準的な状態で、真ん中が思春期の頃のような生え際に下げて移植した状態です。なお、ここまで下げてしまうと、2500~3000グラフトの移植毛を使用しなければなりません。
そして、もしAGA脱毛予防薬が面倒だからという理由で継続使用しなかった場合で、重度AGA進行型である6型まで脱毛進行する素因があるとすれば、中年期の頃には恐ろしい状態となります。額にヘアバンドよりも見栄えの悪い毛髪が取り残されてしまっています(B図下段の右)。
このような状態になってハゲてしまった後方に移植しようとしても有効な体毛を持たない日本人では、もう十分な移植毛はないわけです(ドナー枯渇 donor depletion)。
では、このような生え際はどのように修正したらよいのでしょうか。
特殊な場合を除き、3つの方法が考えられます。

1.脱毛してしまう。
2.FUEで移植毛をくり抜いて後方の脱毛部に再移植する。
3.移植部を帯状に切除して、FUT/FUSSにように株分けして後方の脱毛部に再移植する。

このような修正法が考えれますが、いずれも複数回の施術が必要となり、新たな費用の発生や新たなキズができてしまいます。そして、せっかく移植した頭髪のいくらかは失うことになります。したがって、このようなリスクを十分に考えておく必要があります。現時点での医学的問題は、”人間は必ず老化する!”ということであり、将来を考えて決断していくことがこういった場面では後悔しないために極めて重要です。

なお、ここで勘違いしてほしくないことは、20歳代の若年者であったとしても植毛術をしてはいけないということではありません。血縁者に高度AGA脱毛者がいたとして、自分が高度AGA脱毛になった時をイメージし、そのような状態になった時に結局移植しなければならない場所であれば、移植してもOKなのです。生え際に移植する場合においても、標準的な生え際ラインに移植するのであれば全く問題はありません

(2026年1月 K. Yamamoto)

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