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参考症例集・瘢痕部修正『瘢痕部脱毛部(キズ跡)に植毛術を行った症例の解説』

Lesson 2. 難治例:2つのつむじに囲まれた円形のキズ跡:瘢痕部修正➡FUE

20歳代前半、男性。2つのつむじの間にある目立った瘢痕部への治療。
通常、分け目の部分にできたキズ跡に最初から植毛術を行うのは良くありません。

術前・術後経過写真

【術前】
瘢痕(キズ)の原因:約1年前に良性腫瘍(脂腺母斑:将来癌化の可能性のある良性腫瘍)のために他院で切除術を行ったが、キズ跡が気になって植毛術目的のために来院しました。
術前所見:写真を見るとわかるように、キズが広がってしまった状態です。瘢痕部は、縦幅2.5cm X 横幅1.4cmの楕円形です。
さて、この症例で考慮に入れるべき問題点は2つあります。

  • キズ跡がつむじにあることです。さらに悪いことに上下2つのつむじに囲まれた場所にあります。つむじの特徴は、頭髪がつむじ中心部から360度外側に向かうため、普通の状態(100%の密度)であっても目立ってしまうのです。このつむじが2つあるのです(ただし、2つのつむじが生来からあったものなのか、腫瘍がつむじ中心にあったために他院での手術後に2つに分断されたしまったのかは不明です)。
  • キズの左右の頭髪が外側に向っています。そのため、この状態で植毛術を行っても分け目として目立ち過ぎてします。安易に移植してしまうと、3回植毛術を行って密度100%にしても分け目になってしまってキズ跡(の色)が目立つかもしれません。

術式の選択:まず、このようなキズの場合、キズを切除して再縫合しても結局キズは同じように開いてしまいます。したがって、安易にキズ跡部を切除して単純縫合しても永久に満足することはありません。
縫合後にキズが開きにくい方法として、エキスパンダーを頭皮に挿入して頭を膨らませてからキズを修正する方法もあります。しかし、今回の場合は欠点が多過ぎる(”頭を膨らませる期間”と”頻回の受診”、”新たな線状のキズが増える”や”一般的に頭髪を多量に損失する可能性”、など)ので、適応しにくいでしょう。
したがって、今回は、キズ幅の縮小とキズの左右の頭髪の角度を変える手術をまず行った後に、植毛術(FUE)を行うことがベストの治療と判断しています(通常、キズの横幅が5mm以下であれば、瘢痕部修正術だけの1回で治療が終了します)。

【1回目の手術:瘢痕部の縮小修正術】
今回、横幅のキズ幅は1.4cmですので、瘢痕部修正術を行ってもキズはある程度開いてしまいます。したがって、2回の手術治療での治療を目指すことになります。なお、一般的な単純縫合では線状のキズは修正することは不可能ですが、私の方法(Dermatologic Surgery 2015;41(12):1434)では線状のキズ自体は修正されます。キズ自体はありますが、キズから発毛しているので目立たなくなるのです。ただし、繰返しになりますが、私の方法であっても1回の手術で修正できるキズ幅の限界は横幅5mm程度のキズまでです。術後3週目ではキズは開いていませんが、その後、キズは徐々に引き延ばされて、ある程度広がってしまいます。
1年後の結果を見てみましょう。瘢痕部は、縦幅2.7cm X 横幅0.6cmの楕円形となっています。したがって、横幅は0.8cm縮めることに成功しています(縮小率は、(0.6cm - 1.4cm) / 2.4cm x 100 = -57%と横幅は半分以下に縮小)。
さらに、重要なのはキズの左右の頭髪の角度です。頭髪の角度は術前には外に向いていたものがほぼ垂直までキズの左右の頭髪が内側に向くように修正されています。したがって、キズの周囲の頭髪がキズを隠すようになうな角度で発毛しているのがわかるでしょう。しかし、1年後のキズでも、場所がつむじなのでまだキズ跡は目立っています。

【2回目の手術FUE】
1回目の手術によって、キズの面積の縮小と頭髪の角度の補正という2つの目的が完了しました。つまり、安全に植毛術を行える準備が整ったわけです。
しかし、このような手術を行う問題としては、病変部に手術操作を1回加えてしまうと、植毛術の場合、安全なグラフトの生着を確保するために、最低限1年程度の期間を待ってから手術を行う必要があることです。また、特にキズ跡修正の場合の患者さんに対しては、新たに線状のキズができるのを嫌う傾向が少なからずあるため、FUEを選択する場合が多くなります。
FUEの評価:移植グラフト数は68グラフト、毛包切断率:5.8%、グラフト損失率:0%でした。グラフト損失率が0%でしたので、FUEが適していたことを示しています。なお、切断率、損失率については、Step3『Proの植毛術』をご参考ください

独自の瘢痕部修正術

【私が行う瘢痕部修正術って何?】
図を見て下さい。図の左は、通常の修正術の場合です。たとえ1mm幅のキズで治ったとしても、線状になってキズが目立ってしまいます(図で移植毛がない場合を想像してみてください)。一方、図の右のように、私の方法では、キズはあっても目立ちにくいことがわかります。キズの周囲の頭髪の角度がキズの方に向ったり、キズ跡から頭髪が発毛することによって、キズ跡の横幅も縮まって、残存した無毛のキズ跡への移植密度も上げることが可能となるのです。

(2022年4月 K. Yamamoto記)

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