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FUEの非適応者と適応者について『毛髪がやや細く、ウェーブのある症例』

Lesson28. FUEの非適応症例について考えてみる

30歳代、男性。生え際を適正位置で移植。
毛髪の太さが平均よりやや細く、軽度にウェーブしている髪の毛の場合はFUEの良い適応者である可能性が低くなります。
FUE、1000グラフト。

術前・術後写真

【術前】
20才前半から生え際の後退が気になり、思うようなセットができなくなったことが動機のようです。偶然に他人の会話から植毛術のことを知り、当院にご来院されました。
術前カウンセリングの結果、適正位置の生え際ラインで移植することになりました。

HN分類(➡ 男性のAGAのHN分類表をご参考ください。):
典型的なAGA3型です。
薬剤の使用:ご来院の3,4年前からフィナステリドとミノキシジルを個人で使用しています。
遺伝的素因:上の兄はすでに5型まで脱毛が進行しているためにスキンヘッドにしているようです。父母方に4型から6型のAGAが存在します。
ドナーの状態:頭髪ははやや細く、軽度にウェーブした毛髪です。ご年齢の割に密度は若干低めです。
術式の選択:血縁者に高度AGA脱毛者が多く存在しますが、薬剤使用を継続しているため、FUEを選択しています。

通常、このような髪質とドナー条件の方は、皮膚の下で毛髪がいろんな方向に向いているため、FUEでグラフトを採取する時、切断されてしまう毛髪が多くなってしまいます。
したがって、年齢が高くなるほど、FUEで健康なグラフトを獲得できる確率が極端に減ってくると予測できます。
そのため、今回の症例のように薬剤の継続使用が重要となります。
こちらとしても、このようなドナー条件で患者さんかFUEにこだわる場合は、少しでもドナー条件が良いできるだけ若い年齢で手術を行いたいのです。
そして、薬剤を使用して脱毛の進行を阻止し、将来できるだけ手術をしないように毛髪を守ってほしいのです。

【手術評価】
移植デザイン:上述したように、本標準的な生え際ラインを設定しています。
また、写真には写っていませんが、左生え際後方にご本人も気づいていない無毛の傷跡があっため、ついでに移植しています。
FUEの評価
FUEで最も評価すべき検査は、毛包切断率です。この例では、毛包切断率(➡ Step3『Proの植毛術』をご参考ください。)は8%でした。また、グラフト損失率は14%でした。ご年齢の割には、やや悪い結果でした。今後、薬剤使用を継続することによって、AGA脱毛の進行が十分抑制されると考えられますが、万一、今後植毛術をご検討の場合は、FUT/FUSSで行うのが確実であると思われる症例です。

FUEで後頭部を剃毛した場合

【手術結果 - 術後6ケ月目・1年目】
移植部:薬剤を使用している方なので、術後6ヶ月目で、生え際はほぼ完成し、1年目で移植毛はさらに長く伸びていますが、写真ではわかりにくいです。

【FUEのドナー部の経過】
図の左の写真は、FUEでのグラフト採取部ですが、他の症例と同様に1回くらいの手術では他人に気づかれることは全くありません。
しかし、右の写真の拡大像を見ると、FUEで1つ1つグラフトがくり抜かれた部分に小さい白点がたくさんあるのがわかると思います。
つまり、再三述べているように、FUEであっても小さなキズがたくさんあるので、その小さいキズを隠すくらいの毛髪の長さはほしいということです。
なお、FUEによって作られたこのような小さなキズがある場所は意外と広範囲なので、再度植毛術を行う時に、ドナー条件が悪い範囲は意外と大きいということを忘れてはいけません。

(2025年3月 K. Yamamoto記)

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