Lesson 5. 軽度AGA脱毛に対するM字部植毛術
20歳代、男性。典型的な無毛M字部に対する植毛術です。
FUE、1000グラフト。
【術前】
HN分類(➡ 男性のAGAのHN分類表をご参考ください。):3型。典型的な無毛状態のM字脱毛です。
このような状態では、薬剤などの維持的治療法では改善の見込みはないため、外科的治療である植毛術の絶対的適応になります。
今回の症例では、カウンセリング時は800グラフトの予定でしたが、手術当日に、若干生え際ラインを下げたいとのご希望で、1000グラフトに移植グラフト数を変更しています。
このように、手術開始の直前までであれば、移植グラフト数を変更することも可能です。
ただし、手術が開始してしまった後では変更不可となります。
というのも、たまに手術中に、”ここも移植できませんか?”と述べる方がいます。しかし、採取されたグラフトの配分が決定されてしまっているため、もう無理なのです。
遺伝的素因と年齢:母方にAGAの遺伝歴はありませんが、父方は5型まで進行しています。
ドナーの状態:後頭部のドナーの状態は良好で、問題はありません。
術式の選択:HN分類では軽度AGAであり、年齢も若く、ドナー密度も良好です。したがって、問題なくFUEが選択できます。
ただし、AGA脱毛の兆候が見られた場合は、遅れることなく脱毛進行予防薬を継続する必要があります。
【手術評価】
平均移植密度40グラフト/㎠で移植しています。
FUEの評価:FUEで最も評価すべき検査は毛包切断率です。この例では、毛包切断率(➡ Step3『Proの植毛術』をご参考ください。)は8%でした。また、グラフト損失率は3%であり許容範囲内でした。次回、植毛術を検討する場合でも、これらの数値を考慮に入れてFUEを選択しても問題ありません。
【手術結果 - 術後1年目】
術後評価は術後1年目で判断します。想定通りの結果となっています。
【ドナー部 - 術後1年目】
写真は、ドナー部(後頭部)の術後1年目の状態です。
FUEでも小さい点状のキズが残りますので、全くキズがないということではありません。
この症例では、点状のキズが白く目立ちやすいことがわかります。
ただし、これでも素人目にはわからないでしょう。
(2022年12月 K. Yamamoto記)