Lesson 2.ポニーテールにできない生え際ラインとは?
40歳代女性の生え際ラインの修正術の症例です。
FUT:1200グラフト(最終グラフト: 1345グラフト)

【術前】
「昔からヘアスタイルがうまくできない」ということで生え際修正の目的で当院に受診されました。
ポニーテールもできないということなので、どのようなことなのか私もすぐにはわかりませんでした。
その原因を初診時の状態で考えて見ると、以下のようなことが原因ではないかと思われます。
● 長い頭髪が伸びている生え際のラインが非常に高い生え際であること。
● 女性や子供の時の特徴である生え際にある短い伸びない頭髪の幅が分厚く分け目を作るにも違和感がでてしまうこと。これは、この短い幅のある伸びない頭髪と長く伸びる頭髪の生え際のラインが非常に高いのが相まって、額を出すようなヘアスタイルはすべて難しいと想像できます。
● 女性の生え際の分類で、M字型に分類されるので、生え際自体の形がそもそも男性的に見えてしまうこと。
以上のことを考慮して、生え際のデザインを提案をさせていただきました。
要点として、
● 第一に、M字型の生え際の形を女性型の生え際の好まれる形である丸い生え際に修正することにします。
● 第二に、幸い短く伸びない生え際の頭髪の高さがほぼ適正な生え際の高さであることから、ちょうどこの短い頭髪がある部分に移植ラインを設定するのが良いのではないかと提案しています。これは無毛部位への移植と違って、短い頭髪がある部分に移植することによって、自然さが保たれる可能性が高いことと、密度アップによる2度目の植毛術を回避できる利点があるからです。
遺伝的素因と年齢:FAGA(女性のAGA)の遺伝歴はありません。
ドナーの状態:ドナー密度は非常に高く、ご年齢の割に毛量の多い方です。
術式の選択:
女性の場合は、剃毛することに抵抗がある方が多いので、剃毛しないFUE(NS-FUE)か、ドナーを塊で採取するFUT/FUSSの2択になります。
通常は40歳以上の年齢であれば、確実な方法であるFUTで行うのが適切です。
今回の場合は、上記の説明をご理解いただいたので、FUTを選択されています。
【手術】
移植面積は35㎠ほどなので、移植密度約35グラフト/㎠で移植術を行っています。

【手術結果 - 術後6か月目と術後1年目】
術後6か月目でほぼ結果が出ています。
術後1年目で完成で、想定通りの結果となっています。
【ドナー部 - 術後1年目】
女性の場合、髪の毛は男性と比較すると長く伸ばしていることが多いでので、通常は採取部以外を剃毛しない植毛術を選択するのが普通です。
今回は、FUTで行っているので、線状のキズとして治癒しますが、40歳以上のご年齢では当院の方法ではキズが広がって目立ってしまうことはありません。
今回の場合もわかならいキズに治っています
最後に、手術後1年目での患者さんの率直な感想を記載しておきます。
『ダウンタイムとかびっくりしましたが、勢いだけで実行してしまったことを後悔しました。けど毛が生えてやがてそれが普通になって不思議と前から自分はこうだった気がして、気持ちも変わって今の自分が人生で1番好きです。ありがとうございました。』
以上のようなご回答でした。このようなご意見から、手術を決断されるにあたってのご不安と決意、そして、手術を行ってからも複雑な心境が伝わってきます。
植毛術は、特に他の美容手術とは違って、手術をしたからといってすぐに結果がでるわけではありません。一度は移植毛の大部分が抜けて、それから3ヶ月程度で細い毛髪が生えてきて、その細い毛髪が太い毛髪に変化するまで、また3ヶ月程度かかってしまうからです。
1年目の最後の検診時でのヘアスタイルの変化や表情の変化を見ると、髪の毛の大切さをつくづくと考えさせられる症例でした。
(2024年3月 K. Yamamoto記)