Lesson 15. ドナー部のショックロスについて見てみましょう
30歳代、FUT/FUSSでの前頭部修正の症例です!
FUTのドナー部のショックロスは患者さん自体はあっても気にしないことが多いですが、実際にはほぼ全員の方に起こっている術後の現象です。
FUT/FUSS:1600グラフト(最終グラフト数:2025グラフト)。

【術前】
HN分類(➡ 男性のAGAのHN分類表をご参考ください。):4型。
20歳代半ばから生え際の薄毛が気になり、プロペシアを3ヶ月だけ服用してすぐに止め、30歳代でもデュタステリドを2ヶ月だけ服用して止めている。
このように非常に短期間だけ脱毛治療薬を服用する場合は、脱毛の進行をストップさせる効果はほぼありません。
副作用が気になり止めたとのことですが、このような方は非常に多いです。
ご来院時では、AGAは4型まで進行してしまっています。
なお、薬剤効果を期待する場合はせめて5年間は継続して使用する必要がありますので、十分に使用方法についてご理解する必要があります。
さて、術前カウンセリングにおいて、術前の状態で前頭部はほぼ無毛部位が主体の4型であり、ドナー密度は低く、脱毛治療薬も行わない可能性が高いこともあり、移植グラフトの損失が少ないFUT/FUSSで行うことがベストであると提案しています。
遺伝的素因:母方に4型があり、父方にはAGA脱毛者がいません。
ドナーの状態:後頭部のドナー密度は若干低密度です。
術式の選択:ドナー密度は低く、脱毛治療薬の使用継続は明確ではないので、上記のことをご理解の上でFUT/FUSSを選択されました。
【手術評価】
生え際のラインは日本人としては比較的高いラインですが、前頭部に平均移植密度40グラフト/㎠で移植しています。

【手術結果 - 術後3ヶ月目・術後6か月目・術後1年目】
術後直後から3ヶ月だけミノキシジルを内服しているため、3ヶ月目の時点で大部分の移植毛は再発毛してきているのがわかります。
その後は、全く脱毛治療薬を使用していませんが、順調な経過で完成しています。
しかし、ここで注意していただきたいのは、1年目で移植効果自体は完成してしまうのですが、現存する頭髪ばかりでなく、移植毛に対しても、毛髪が老化して薄毛が進行しないように十分なメンテナンスが必要であるということです。
【FUT/FUSSのドナー部のショックロスについて】
一般に、移植部の一時脱毛やショックロスを気にされる方は多いのですが、ドナー部の一時脱毛やショックロスについて気にされる方は非常に少ないのではないでしょうか?
実際には、ドナー部の一時脱毛自体は多かれ少なかれすべての患者さんに起こってい現象です。
これは、FUT/FUSSのみならず、FUEであっても起こります。
今回の症例を見てみると、術後3週後においては抜糸後でもあり、ドナーのキズの赤みが目立っています。この赤みは一般的な現象です。痛々しいですが....
次に術後7週目の写真を見てください。『ドナーの赤みが引かない』とのことで画像を添付して送信していただいたものです。
赤み自体は術後3週目より引いていますが、キズの周囲の頭髪がなくなっているのに気づくでしょう。これが、ドナー部のショックロスです。
特にこの症例のように喫煙している方に目立ちやすい傾向があります。
しかし、移植部と同様に術後3ヶ月前後で抜けた頭髪は再発毛しますので、ご安心ください。
この例でも、1年も経つと、ドナー部の赤みもほぼなくなり、キズもわからなくなってしまっています。
(2025年3月 K. Yamamoto記)