Lesson4-1. AGA Ⅲa型に対する植毛術
20歳代後半、男性。1300グラフトで生え際を適正位置まで移植。
FUE、1300グラフト(最終グラフト数:1307グラフト)。
【術前】
今回の症例は、Lessonを2回に分けて見ていくことにします。
特に2回目のLesson4-2では、ミノキシジル内服薬の術前術後の効果について解説していきます。
ミノキシジルの限界についての助けになるかと思いますので、次回もご参考ください。
HN分類(➡ 男性のAGAのHN分類表をご参考ください。):
生え際が全体的に後退した3a型です。
まず、術前の状態を見てみましょう。
術前の状態では、生え際に太いうぶ毛があります。毛が伸びないので、クリップでは留めることができません。
これらは、ミノキシジル内服によって増毛したもので、AGAさえなければ、長く伸びる太い頭髪だったのでしょう。
しかし、残念ながら薬剤を使用しても、これ以上太く長く伸びることはないのです。
薬剤の使用:術前3ケ月前からAGA脱毛進行予防薬を使用しています。
遺伝的素因:父方と母方と共に脱毛進行は確認できませんでした。
ドナーの状態:ドナーの状態は非常に良好で、密度も平均以上あり、植毛術を行うにあたって申し分ありません。
術式の選択:ドナーの状態や髪質の状態は良く、また、20代という若い年齢であることから、FUEを選択しています。
【手術評価】
移植デザイン:この症例では、ミノキシジルに反応した太いうぶ毛の範囲が、AGA脱毛がなかった場合にしっかりした頭髪であったはずです。
したがって、本来の生え際である太いうぶ毛の範囲に移植することになりました。
ただし、実際に植毛術を行う場合には注意点があります。
このうぶ毛に騙されてはいけないのです。
ミノキシジルの服用をストップした後、目では見えない”色素のないうぶ毛”にすべて戻ってしまうのです。
したがって、植毛術に行うにあたって、しっかりとした密度で移植し、かつ、できるだけ均等に移植しておかなければなりません。つまり、これらの太いうぶ毛がなくなる前提で植毛術を行う必要があります。
FUEの評価:FUEで最も評価すべき検査は毛包切断率です。この例では、毛包切断率(➡ Step3『Proの植毛術』をご参考ください。)は0.4%、グラフト損失率は0%であり、非常に優秀な結果でした。このような症例では、比較的高齢になってもFUEを安全に実施できる可能性が高いことを示しています。
【手術結果 - 術後6ケ月目】
移植部:術後3ケ月目でミノキシジルの内服を中止しています。
しかし、薬剤の効果によって移植毛の発毛は順調となり、6ケ月目でほぼ最終結果に近づいています。
術前写真と比較すると、正面像で前髪のボリュームが劇的に増加しているのがよくわかります。
また、ミノキシジルの効果も若干残っています。
【手術結果 - 術後1年目】
移植部:1年目の結果を見てみましょう!
ミノキシジルの効果は完全に消失しています。
しかし、移植毛のパワーにより、たとえミノキシジルの中止によって太いうぶ毛がなくなったとしても、生え際の自然さを保っています。
(2022年10月 K. Yamamoto記)